近代ガラス工芸

近代ガラス工芸
19世紀末から20世紀初めにかけて、フランスとベルギーを中心に広まったアールヌーヴォー(フランス語: Art nouveau, 新しい芸術を意味)と呼ばれる国際的な芸術運動がありました。建築、家具、宝飾、絵画など多岐にわたる美しい芸術が生み出されましたが、中でもガラス工芸はその代表的なものです。ただの生活の道具や飾りではなく、ガラス工芸が芸術の対象に昇華されたともいえるかもしれません。吹きガラスだけでなく、多様な工夫をこらしたガラス工芸技法が花開いた時期でもあります。日本が開国したのは19世紀半ば。盛んに輸出された日本の美術品(浮世絵、絵皿、工芸品など)は当時ヨーロッパで大きな注目を集めていました。アールヌーヴォーにはジャポニズムと呼ばれる、日本美術への憧憬が大きな影響を与えたといわれています。アールヌーヴォーの巨匠エミール・ガレやルネ・ラリック、ドーム兄弟、ルイス・コンフォート・ティファニーらのガラス工芸品にも当時欧米ではあまり見られていなかったトンボや桜、アヤメ、唐草などの日本人が好んだモチーフが多用されますが、ここにも日本の影響が色濃く見られます。アールヌーヴォー後、1910年代半ばから1930年代にかけてはアールデコ(フランス語:Art Deco, 装飾美術を意味)と呼ばれる美術運動もありましたが、ここでもルネ・ラリックやアンドレ・ドラットなど多数のガラス工芸家が活躍しました。
文責:
産業技術総合研究所
篠崎健二