光通信ファイバーは、大陸間そして各国の会社・家庭を繋ぎ、昨今の膨大なデータ通信を行う道の役割をしています。そして、情報を運んでいるのが光となります。光は真空中であれば約30万㎞/秒(1秒間に地球を7周半)という速さで進み、ガラスファイバーの中ではほんの少しだけ光の速度は落ちますが、それでも高速で情報通信できることを想像できると思います。光ファイバーは屈折率の高いコア(直径はたったの9μm, 1mmの9/1000)とその周りにある屈折率の低いクラッドとと呼ばれるガラスからできています。このような構造にすることで、コアに導入した光が全反射と呼ばれる現象によって、ファイバーのコアから光が漏れずに伝搬することができます。水中から水面を見上げた時に、鏡のように光が反射しているのを見た経験があるかもしれませんが、これと同じ原理です。1960年代に利用できた光ファイバーは透明性が足りず、20m進んだだけで、光の強度は1/100になったため、伝送距離が長くなると情報伝送ができなくなる状況でした。しかし、1966年にCharles Kaoはシリカガラスファイバーの不純物を取り除けば透明性が向上でき、光の強度が1/100になるまでのファイバーの長さを1kmまで延長できると予測しました(2009年にノーベル物理学賞を受賞)。1970年には、この予測が正しいことが実際の高純度シリカファイバーで証明され、現在では100kmの距離でようやく光強度が1/100になるような超低損失の光ファイバーが実現され、使用されています。なお、通信に利用される光は、近赤外光と呼ばれる赤色の光よりも波長の長い光であり、ガラスファイバー中の不純物を極限まで取り除いても微量に存在する水分と主成分であるSiと酸素の間の分子振動、そして光の散乱現象であるレイリー散乱のすべての影響が最も小さく、透過率が最も高くなる1.55μmの波長の光が主として利用されています。
文責:
京都大学
上田 純平
京都大学
上田 純平