人工衛星用望遠鏡

地球観測用の小型人工衛星
人工衛星用望遠鏡
最近はスマートフォンのマップアプリなどでも手軽に衛星写真を見ることができるようになりました。人工衛星によっては高度数百km上空から地球上の1 m以下の物体、例えば自動車を見分けられる超高性能の望遠鏡を搭載しています。宇宙は-270℃という超低温ですが、太陽の光が当たると光が当たった場所と当たらない場所で200℃以上の温度差があるなど、とても過酷な環境です。物体は温められると基本的に膨張するという性質があります。一方で、人間でいう目の役割をする望遠鏡の鏡が少しでも膨張により歪んでしまうと、きれいな画像を撮ることができません。人工衛星に搭載される小型軽量で、さらに大きな温度差でも画像が歪まない望遠鏡を実現する鍵はガラス。熱で膨張するガラスの中に、熱で収縮する特殊なナノサイズの結晶を均一に析出させることで熱膨張率をほぼゼロに抑えた「ゼロ熱膨張結晶化ガラス」というガラスが使われます。これを金属膜でコーティングした高精度な鏡で集光する反射望遠鏡により画像を取得しています。実はカメラのような光を透過するレンズで集光するのではなく、鏡で集光して像を捉える、というのも超高精度の望遠画像写真を撮るポイントです。
文責:
株式会社オハラ
南川 弘行

写真提供:
株式会社オハラ, キヤノン電子株式会社