紀元前1500年前頃より使われてきたといわれるガラス製の食器は、飲み物などの容器として私たちの何気ない生活の一幕に出てきます。日常よく目にすることの多いガラスの食器ですが、ここにはガラス科学の知恵が隠されています。現在では、ガラスに様々な処理をしてその用途に合わせた、食器用のガラスが作られています。ガラス表面付近に縮こまろうとする力(圧縮応力)を付与する処理により、その強度を増すことで壊れにくいようにした物理強化ガラス、ガラスの組成を変えることで透明度を高めて装飾性を増したクリスタルガラス、同じくガラスの組成を変えることで急加熱に対して素材の伸びを抑えることで、壊れないようにした耐熱ガラスなどがあります。耐熱ガラスは耐熱温度差が120度と大きいため、オーブンや電子レンジ等で使用したり、熱湯消毒が出来るようになります。異種の材料組織を組み合わせ、温度が変化しても伸び縮みしない"ゼロ"熱膨張率化もガラス素材ならではの特徴であり、食器の安全性を高めることができます。また、摂氏500度以上に加熱しても形状を保てる耐熱性、酢や梅干し等の酸性環境でも元素溶出しない化学耐久性も耐熱ガラスの持つ利点です。
文責:
AGC山崎芳樹/AGCテクノガラス熊谷剛
写真提供:
AGCテクノグラス株式会社
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