結晶は規則正しく原子が配列した固体です。ある原子の集まりが(単位構造と呼びます)3次元的に規則正しく積み重なった、秩序構造と呼ばれる原子配列をしています。身近なものでは食塩や陶器はたくさんの結晶が集まってできています。一方で、ガラスは無秩序構造と呼ばれ、高温で液体だったバラバラな構造のまま固まったものです。例えば、容器に全く同じ大きさのボールをできるだけ密に詰めてください。規則正しく並んだと思います。これが結晶です。一方で、ぐちゃぐちゃと無秩序に詰めたのがガラスです。なので、無秩序構造では容器に入る球は少なくなり、密度が低い状態になります。同じような構成元素でもガラスになったり結晶になったりすることがあります。隣り合う原子と原子の数や距離は結晶とガラスでとても似ていても、秩序正しく並ぶかどうかがガラスと結晶の違いです。秩序正しく原子が並びなおすために十分な時間をかけてゆっくり液体を冷却すれば結晶になります。一方、急速に冷却すると、原子は並びなおすことができず、液体のまま固まって固体になったものがガラスです。つまりガラスは動けなくなった液体とも言えるかもしれません。では、限りなく長い時間(数千年、数億年、もっと長い時間)をかけて観察し続ければガラスは液体のように動いているように見えるのか、というのはいまだ最先端の科学でも議論されています。実は、ガラスはとても身近なのに、ガラスがなぜガラスなのか、なぜガラスになるのか、ということは最先端の物理でも熱心に議論されている不思議な素材です。
文責:
産業技術総合研究所
篠崎健二
産業技術総合研究所
篠崎健二