結晶とガラスの体積変化

ガラスの状態図
岩石などの無機物は、融解するまで高温に加熱すると、マグマのようにドロドロと粘度の高い(流れにくい)の液体になります。これを冷やす過程で、原子が規則正しく並ぶと結晶になります。一方で、冷やす過程で結晶にならず、そのまま冷えていくとどんどん粘度が高い水あめ状になっていきます。このような高粘性な過冷却液体状態を経由して、液体のように原子配列が不規則のまま固まったものがガラスです。ガラスは無秩序構造と呼ばれ、高温で液体だったバラバラな構造のまま粘度が高くなって原子が身動き取れなくなり固まったものです。例えば、容器に同じ大きさのボールをたくさん入れてガシャガシャと振っている状態が液体です。これが冷えていくとぎっしりと規則ただしく密に詰まった状態になるので体積が小さくなります。これが凝固点で液体が結晶になるということです。一方で、ぐちゃぐちゃと無秩序に詰めたまま動かなくなったのがガラスです。そのため結晶になるときのような大きな体積変化がありません。ガラスを吹きガラス技法やプレス成型など形状を変えるときは過冷却液体状態になっています。このとき、水あめ状に粘度が高まり固まりつつある状態なので、形を変えてもすぐに戻らずそのまま冷えてガラスになることで寸法精度高く成形加工することができます。過冷却液体状態の粘度が高く、ガラスになった時の体積変化が小さいことも精密な形状を作れる理由です。結晶になる場合は粘度の低い状態から急に大きな体積変化をして固まるので精密な成形加工は難しくなります。身近なガラスコップを作るときにもこのような科学的な裏付けがあるんですよ。
文責:
産業技術総合研究所
篠崎健二