古代のカットガラス

古代のカットガラス
この半球状のボウルは、昔のイラン(ペルシャ)の王朝(ササン朝 226〜651)の主要商品として、周辺国や当時友好関係にあった中国にシルクロードを通ってアジア各国に輸出されたと考えられています。円形などの各種切子とよばれる表面をカッティングして研磨をしていることが特徴です。厚みのあるガラスは、もともと淡い緑色をしていましたが、風化によって表面の色が失われ、虹色になっています。
この作品のような切子の器は、形や大きさ、4~5列の切子の配列が均一であることが特徴です。古墳時代にはシルクロードの終着点である日本にわたってきていたようで、6世紀の安閑天皇陵や、8世紀に聖武天皇が集めた奈良の正倉院宝物などでもたいへんよく似たガラス器が収蔵されており、とても貴重な交易品だったとされます。正倉院に収蔵された国宝 白瑠璃碗(はくるりのわん)が有名です。きっと、昔のイラン(ペルシャ)からシルクロードを通って,中国,朝鮮半島を経由して奈良まで、遠路はるばる割れないように大切に運ばれてきたのでしょうね。
文責:
熊本大学
村田貴広

写真提供:
The Metropolitan Museum of Art