スピングラスは磁性体の一種で、1970年代に実験的に見いだされました。私たちの身の回りで実用化されている磁性体には、永久磁石、パソコン内に組み込まれたハードディスク、モーターや変圧器の鉄心などがあります。そもそも物質が磁場に応答して磁性体として振舞うのは、物質中に含まれる電子がスピンという性質を持つためで、スピンはきわめて微細な磁石のようなものと捉えることができます。永久磁石やハードディスクでは、多くのスピンが同じ方向を向いて規則的に並んでいるため、自ら周囲に磁場を作ったり、磁場に強く応答したりする性質が現れます。このような強い磁性は強磁性体やフェリ磁性体とよばれる物質で見られます。
一方、スピングラスは文字通りスピンのガラス状態です。ガラスは結晶とは異なり、構造を形作る原子やイオンの配列が、広い範囲での規則性を持ちません。同様に、スピングラスでは、超微細な磁石であるスピンが向きをそろえずに不規則な方向を向いて固定されています。スピンの向きがそろっていないため、上記の強磁性体やフェリ磁性体と異なり、強い磁性は現れません。そのため、スピングラスは永久磁石やハードディスクなど実用的な材料としては開発されていませんが、スピングラスの理論研究は、脳の連想記憶のような機能の解明や、それをモデル化したニューラルネットワークを扱う情報学の分野に多大な影響を及ぼしてきました。その結果、今日何かと話題となっている機械学習やディープラーニングといった手法が開発されてきたわけです。
一方、スピングラスは文字通りスピンのガラス状態です。ガラスは結晶とは異なり、構造を形作る原子やイオンの配列が、広い範囲での規則性を持ちません。同様に、スピングラスでは、超微細な磁石であるスピンが向きをそろえずに不規則な方向を向いて固定されています。スピンの向きがそろっていないため、上記の強磁性体やフェリ磁性体と異なり、強い磁性は現れません。そのため、スピングラスは永久磁石やハードディスクなど実用的な材料としては開発されていませんが、スピングラスの理論研究は、脳の連想記憶のような機能の解明や、それをモデル化したニューラルネットワークを扱う情報学の分野に多大な影響を及ぼしてきました。その結果、今日何かと話題となっている機械学習やディープラーニングといった手法が開発されてきたわけです。
文責:
京都大学
田中 勝久
写真提供:
学習院大学 宇田川将文
京都大学
田中 勝久
写真提供:
学習院大学 宇田川将文