ある種の動物は自身の生命保護のために、糖分の一つであるトレハロースのガラス化した状態を利用しています。アフリカに生息する昆虫のネムリユスリカもそのような動物の一種です。アフリカは雨が降らない乾季が長いため、自分自身を乾燥させて休眠状態になることで、生き残れる仕組みを持っています。この仕組みにガラス状態が使われます。乾燥環境になると、体内の炭水化物(グルコース)はトレハロースへと変換します。トレハロースは水と近い性質を持つため、細胞膜やタンパク質に含まれる水と置き換わっていきます。高い濃度のトレハロースは、粘度の高いガラス状態になり安定な固形状態になることで、生体細胞の成分を保護します。また乾燥状態のネムリユスリカに水分を与えることでトレハロースが水に溶け、グルコースへの変換が起こり、再び生命活動が開始します。他にもクマムシや線虫、アルテミアなどが乾燥状態で死なずに、水を与えると活動再開出来ることが知られています。
文責:
AGC株式会社
山崎 芳樹
AGC株式会社
山崎 芳樹