金属ガラス

金属ガラス
私たちの身の周りにあるほとんどの金属は原子が周期的に整列して固まった結晶であり、その性質は、原子の種類はもちろん、原子同士の結合の仕方、結晶の構造やその結晶同士の境界(結晶粒界)の状態などによって決まります。金属ガラスは原子が整列できずに乱れた状態で固まった物質であり、結晶粒界もないため強度や耐食性が高く、優れた軟磁性(周りに磁場があると磁化されますが、磁場がなくなると磁化がほとんど無くなる性質)など、魅力的な性質が現れます。一般に広く知られているアモルファス合金も金属ガラスと本質的には同じもので、非晶質状態の安定性の観点で分類されています。金属ガラスは、そのユニークな性質から、機能材料や構造材料への実用化が進められています。

金属ガラスは他のガラス物質(無機ガラスや有機物ガラス)と同じように、温度を上げると硬い固体状態から水飴のようなネバネバした液体状態に変化します。液体状態の金属ガラスは、小さな力で自由な形に加工することができ、加工後に再び冷やせば形を保ったまま強く硬い固体状態に戻せます。この性質を利用すれば、微小な歯車などの複雑で精密な形状に成形することや、ナノサイズ(百万分の一ミリ)の型模様を金属ガラス表面に写し取ることもできることから、機械部品や記録デバイス、光学部品等への応用が期待されています。

写真は厚さ約0.02 mm、幅約10 mmの薄帯状金属ガラス(アモルファス合金)で、鉄を主成分としています。トランスと呼ばれる電力機器の中には、幾重にも巻いた金属ガラス薄帯が使われ、少ないエネルギー損失での電圧変換を実現し、私たちの生活に役立っています。
文責:
東北大学金属材料研究所 加藤秀実 市坪哲 和田武
東北大学学際科学フロンティア研究所 才田淳治

写真提供:
東北大学金属材料研究所